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インハウスデザイナー ( 2017.09 )

インハウスデザイナーの役割と問題点を考えてみた。

インハウスデザイナーは、社内で社外に対して、良い成果物(アウトプット)を出すために、様々な役割を背負っている。
ある課題を課せられたとき、まずは、リサーチ(分析)をし、案を作成する。会社によっては、案を作成するまでの工程は様々。
これは仕方がないことだが、この工程をうまく構築している会社は、効率よくデザインワークが出来ているだろう。
すぐに結果(形)を出したい私のような人間にとっては、リサーチ、分析などをスルーして、案づくりに取り掛かる。良いか悪いか別として、結果、会社として、良いアウトプットが出せればよいのである。

インハウスデザイナーと社外デザイナーとの大きな違いの1つとして、「社内調整」がある。社外デザイナーでも、その組織内で調整はしているだろうが、実際にインハウスデザイナーが作った案でも、社外デザイナーに依頼して作った案にしろ、一旦、インハウスデザイナーがそのボールを持つ。

デザインを社内調整する。意外とこの工程が良いアウトプットを出すことに対して邪魔をする。

ここで言う、社内調整とは、比較的規模の大きい企業(組織)を対象しているが、小規模でも、同じような問題が起こる。


インハウスデザイナーでも、デザインした案を相手に伝えるため、そのデザインに至ったコンセプトを説明するだろう。大規模な企業になれば、その他、無駄と思えるルールも存在する。

「こんなデザインが出来ました!」

と、チーム内スタッフ、またはマネージャーに見せる。
「何か改善点や感想はありますか?」と聞くと、チーム内スタッフ(もしくはマネージャー)は、何でもいいから、意見を言わなくてはと、不思議な義務が生まれてくる。
何か問題点を探して、その点を伝えてあげようという優しさか、こんなデザインはありえないという心配からか、皆、意見を言うことになる。

私は、いつでも自分の“感覚”を信じてデザイン案を作成している。これは悪いデザイナーの見本的な思考だが、なぜか、自分の案より、良いものはない!、と思いながら、部内にデザインをレビューをしてもらう。

話は少し逸れたが、この部内レビューで、発案者は意見をもらう。
問題はここからだ。

デザイナーという人種、特にインハウスデザイナーは、指摘された部分が気になってしょうがない。何故?、自分が間違っている?、などなど色々と自問する。
人は理解出来ないもの(自分の知らない事)に対して、臆病になりがちだ。そして、その発案者は、デザインに修正を加えてしまうのである。

指摘されるのも、デザインを修正するのも、決して悪いことではない。ここで悪なのは、「自分が自信を持って形にしたデザイン」に容易に変えてしまうことである。

レビューの結果、指摘部分を修正・変更し、社内で一致したデザインができる。これでフィニッシュだ。小規模な組織なら。

大規模な企業の社内調整

以前、面白いデザインの話をWebサイトの記事で読んだことがある。
それは某大手自動車メーカーのカーデザインが決まるまでの話である。
小規模なり、大規模なり、まずはデザイン案ができる。小規模組織の場合は、前途のとおり、数人でレビューをして修正をする。しかし、大規模な組織では、多くのレイヤーがある。

まずは、デザイン案を、所属部署のマネージャーにレビューしてもらう。デザイナーはコンセプトも口頭で伝え、ちょっとしたプレゼンをする。
それを聞いたマネージャーは、納得し、時間のかからない程度の気になる点を修正するように指示を出す。

「何故、時間がかからない程度」なのかというと、それは中間管理職であるから。スケジュール通りにデザインを提出することが、なによりもマネージャーの使命なのである。

その後、さらに社内調整は続く。シニアマネージャーや、製造担当、営業担当、役員とレビューしていく。勿論、このレビューをしてもらうことに何の問題もない。
問題なのは、発案者自身のコンセプトがしっかりと伝わっているかが重要。


組織には、必ず上下関係が生まれる。これは仕方がないこと。上から言われることを無視し続けれることはできない。他の部署から、後輩からの意見も、取り入れる事も必要な場合もある。

そうして社内調整をして出来上がったデザイン、本来は、その会社の総力をあげて作られているはずだが、結局、最初に発案者が設定したコンセプトからは大きくぶれて、角の丸い、大きな特徴のないプロダクトデザインが出来るそうだ。
つまり、「発案者が自信を持って形にしたコンセプチャルなデザイン」が、消えて無くなっている。

何故、こういうプロセスになってしまうかと言うと、日本企業にありがちな上下関係。

つまり、上司の言うことに逆らえない、文化があるのかもしれない。
でも、近年は、それも変わってきている。逆に、上司にダメ出しをする社員もいるくらいだ。では、何がデザインを悪くしているというと、レビューの際、発案者のプレゼンを口頭で聞いていないこと、デザインを「好きか嫌い」かで、レビューしている事が多くある。


「発案者のプレゼン」は、直接、デザイナーが語れるステージである。主役はデザイナー、その他の部門の人は、オーディエンス。そこでデザイナーの思いがしっかりと伝われば、きっと各部門からの意見も違ってくるだろう。

もう1つの問題である、デザインを「好きか、嫌いか」で判断している人が多くなること。
全員がすべて同じ感覚を持っているわけでもないし、各部門ごと、やってほしい、こうしてほしい、といった自分の部門が困らないようなデザインを必死に求めてくる。

当然といえば当然。だが、レビューは、あくまでも会社として「良いか、悪いか」で見なければならない。
これはレビューを頼まれた人の義務。この義務を怠ると、結局、今までと変わらないデザインが生まれる。

変わらない組織で、同じことを繰り返していると、当然、何も変わらない。とても残念。
多くの視点でデザインを見てもらえる大企業に所属しながら、コンセプトがブレてしまい、せっかくのプロダクトも、お客様に対して説得力がなく、敷いては企業価値の低下につながりかねない。


私見であるが、デザインチームは、上下関係のある組織図とは、別な場所に置くべきだと思う。
社長直下でもいい、レビューは上層部だけにしてもらい、デザインを決定するようにしてもいい。

日本製品の品質は、世界トップクラス。これは誰しもが認める事である。しかし「そのデザインは?」というと、疑問符がつく。


今の日本企業は、営業・マーケット部から、エンジニア部からの社長は多くいる。いや、ほとんどがそうだ。それは決して悪い事でも良い事でもない。


しかし、日本には、全世界が注目する古来から伝わってきた伝統がある。それを大切にし、具現化する企業が、今はほとんどない。

海外企業の組織づくりを、文化の違う日本企業に持ち込むのは、ミスフィットかもしれないが、米国Apple社のように、デザイン担当者も、 企業の中心的な地位を与えるのもの面白いかもしれない。


そう思うと、インハウスデザイナーの役割は、今後、大きく変わっていく、いや、デザイナー自身が変わっていかなくてはならないと思った。